「自分だけのオリジナルアクリルスタンド(アクスタ)を作りたい!」 最高のイラストが完成し、いざ入稿しようとした瞬間、**「白版」「カットライン」**という見慣れない言葉に手が止まってしまった…そんな経験はありませんか?
「専門用語で難しそう…」「データに不備があったらどうしよう…」
ご安心ください。この記事は、そんなあなたのための「完璧な入稿データ作成マニュアル」です。
この記事では、Adobe Illustratorを使い、アクスタ製作で最も重要な「白版」と「カットライン」の役割と作り方を、豊富な図解をイメージさせるほど徹底的に、そして優しく解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたは不安なく、自信を持って「完璧なデータ」を入稿できるようになっているはずです。さあ、あなたの素晴らしいイラストを、最高の形で現実世界に召喚しましょう!
【はじめに】なぜ「白版」と「カットライン」が重要なのか?
作業を始める前に、なぜアクスタ製作において「白版」と「カットライン」がこれほど重要なのか、それぞれの役割を理解しましょう。この2つのデータに、メインの「イラスト」を加えた3つが、アクスタデータ作成の「三種の神器」です。

① イラストレイヤー(主役)
言わずもがな、あなたの作品の主役です。キャラクターやロゴなど、アクリルに印刷したいデザインそのものです。

② 白版レイヤー(名脇役)
透明なアクリルに直接カラー印刷すると、色が透けてしまい、ぼんやりとした印象になります。そこで、印刷したい部分の下に「白いインク」を一層敷くことで、その上のカラーインクをくっきりと鮮やかに発色させます。この「白いインクを印刷するためのデータ」が「白版」です。まさに、カラーインクを輝かせる名脇役なのです。

③ カットラインレイヤー(設計図)
アクリル板を、あなたのデザインの形に沿って切り抜くための「レーザーカッターへの指示線データ」です。この線に沿って機械がカットするため、正確な「設計図」を作る必要があります。
この3つを、それぞれ別々の「レイヤー」に分けて作成するのが、データ作成の基本ルールです。 (※弊社のテンプレートをご利用いただければ、このレイヤー構造はすでに準備されています!)
まずはここから!専用テンプレートをダウンロードしよう
「ゼロからデータを作るのは大変そう…」 ご安心ください。誰でも簡単・確実にデータが作れるように、必要な設定がすべて完了した専用テンプレートをご用意しました。
このテンプレートには、この記事で解説している「カットライン」「白版」「イラスト」の3つのレイヤーがあらかじめ全て準備されています。
これを使うことで、面倒な初期設定をすべてスキップでき、データ不備で作り直しになるリスクをほぼゼロにできます。成功への一番の近道ですので、まずは以下のリンクからテンプレートファイルをダウンロードしてください。

ダウンロードしたファイルを開くと、すでに3つのレイヤーが用意されているのが分かりますね。 各レイヤーの役割は、第1章で説明した通りです。
これからの作業はすべて、このテンプレートファイル上で行います。 さあ、準備は整いました。次のステップから、このテンプレートの各レイヤーに、あなたのデザインをはめ込んでいきましょう!
【ステップ解説】カットラインの作り方|あなたのデザインに合わせて解説
ここからは、アクスタの「形」を決める最も重要なカットラインを作成していきます。あなたの元データが「パスデータ(Illustrator等で作った線のはっきりしたデータ)」か、「画像データ(Photoshop等で作った写真や筆跡のあるイラスト)」かによって手順が少し異なります。ご自身のデータに合わせて進めてください。
イラストがパスデータ(ベクター)の場合
イラストの準備と複製

まず、「イラスト」レイヤーにあなたのイラスト(パスデータ)を配置します。次に、このイラストを選択してコピー(Ctrl+C)、そして同じ位置にペースト(Ctrl+F)します。作業中に元のイラストを動かさないよう、「イラスト」レイヤーはロックしておきましょう。これから行う作業は、すべて「カットライン」レイヤーで行います。
フチの元となる線を作成



複製したイラストを選択した状態で、まず「塗り」を「なし」に設定します。次に「線」に、画面上で見やすい色(黒など)を設定します。この時点での線の太さは問いません。
もしイラストが複数のパーツで出来ている場合は、この段階で全てのパーツを選択し、[ウィンドウ] > [パスファインダー] の「合体」機能で一つのオブジェクトにしておきましょう。
線を太らせてフチの幅を決定

合体させたオブジェクトを選択し、「線」パネルで線の太さを「20pt」など、作りたいフチの幅に合わせて設定します。(※フチを3mmにしたい場合は、線の太さを倍の6mm(約17pt)に設定すると近くなります。
線をオブジェクトに変換

次に、[オブジェクト] > [パス] > [パスのアウトライン] を選択します。これで、設定した「線」そのものが、独立した「塗り」のオブジェクトに変換されます。
外側の輪郭線だけを抽出

ここからが最も重要な工程です。
- 変換されたオブジェクトを選択し、「塗り」を「なし」に、「線」に色を設定します。
- 次に、[オブジェクト] > [複合パス] > [解除] を実行します。これで、外側の線と内側の線が分離します。
- 内側の線と、他に細かいゴミのような不要なパスがあれば、それらをすべて選択して削除します。また、いびつな形をしていた場合はアンカーポイントんの削除ツールで消しておきます。外側の、綺麗で滑らかな輪郭線だけを残してください。
最終調整と台座との合体





- 【重要ポイント】 残した輪郭線をよく確認し、鋭すぎる角(トゲ)があれば、ダイレクト選択ツール(白い矢印)でアンカーポイントを調整し、少し丸みを持たせましょう。鋭利な角はカット不良や破損の原因となり、データ不備となる場合があります。
- テンプレートの下部にある「差し込み口」のパーツをコピーし、作成したカットラインの下部に配置します。
- ハサミツールを使い、カットラインの下部(差し込み口と重なる部分)をクリックしてカットし、その部分を削除します。
- 最後に、ペンツールを使い、カットラインの両端と差し込み口の両端を自然な線で繋ぎます。
これで、本体と台座が一体化した、美しいカットラインの完成です!

イラストが画像の場合
画像の配置と準備

まず、「イラスト」レイヤーにあなたのイラスト(画像データ)を配置します。作業中に元のイラストを動かさないよう、「イラスト」レイヤーはロックしておきましょう。これから行う作業は、すべて「カットライン」レイヤーで行います。
「画像のトレース」機能でパス化する

「カットライン」レイヤーを選択した状態で、先ほど配置したイラストと同じものを、再度同じ位置に配置します。
- 配置した画像を選択した状態で、[ウィンドウ] > [画像のトレース] パネルを開きます。
- パネル内のプリセットから「シルエット」を選択します。プレビューで、キャラクターの形がきれいな黒いシルエットに変換されていることを確認してください。
- 確認できたら、上部コントロールバーに表示されている「拡張」ボタンを押します。これで、画像がIllustratorで編集できるパスデータに変換されます。

フチの元となる線を作成

拡張して生成されたパスを選択した状態で、「塗り」を「なし」に設定し、「線」に画面上で見やすい色(黒など)を設定します。
線を太らせてフチの幅を決定

合体させたオブジェクトを選択し、「線」パネルで線の太さを「20pt」など、作りたいフチの幅に合わせて設定します。(※フチを3mmにしたい場合は、線の太さを倍の6mm(約17pt)に設定すると近くなります。
線をオブジェクトに変換

次に、[オブジェクト] > [パス] > [パスのアウトライン] を選択します。これで、設定した「線」そのものが、独立した「塗り」のオブジェクトに変換されます。
外側の輪郭線だけを抽出


ここからが最も重要な工程です。
- 変換されたオブジェクトを選択し、「塗り」を「なし」に、「線」に色を設定します。
- 次に、[オブジェクト] > [複合パス] > [解除] を実行します。これで、外側の線と内側の線が分離します。
- 内側の線と、他に細かいゴミのような不要なパスがあれば、それらをすべて選択して削除します。また、いびつな形をしていた場合はアンカーポイントんの削除ツールで消しておきます。外側の、綺麗で滑らかな輪郭線だけを残してください。
最終調整と台座との合体





- 【重要ポイント】 残した輪郭線をよく確認し、鋭すぎる角(トゲ)があれば、ダイレクト選択ツール(白い矢印)でアンカーポイントを調整し、少し丸みを持たせましょう。鋭利な角はカット不良や破損の原因となり、データ不備となる場合があります。
- テンプレートの下部にある「差し込み口」のパーツをコピーし、作成したカットラインの下部に配置します。
- ハサミツールを使い、カットラインの下部(差し込み口と重なる部分)をクリックしてカットし、その部分を削除します。
- 最後に、ペンツールを使い、カットラインの両端と差し込み口の両端を自然な線で繋ぎます。
これで、画像データからでも、パスデータの場合と同様に美しいカットラインが完成しました!

台座のデザインと差し込み口の作成
本体を立たせるための台座部分を作成します。ここでの作り方が、完成品のクオリティと耐久性に大きく関わります。

【推奨】テンプレートをそのまま使う方法
当社のテンプレートには、最適なサイズとバランスで設計された台座用のカットラインと差し込み口のデータがあらかじめ用意されています。 基本的には、このテンプレートの台座をそのままお使いいただくのが、最も簡単で確実な方法です。
【上級者向け】台座をオリジナルでデザインする方法
「台座にもオリジナリティを出したい!」という方は、もちろん台座部分のデザインも可能です。台座にキャラクターのロゴや名前、模様などをフルカラーで印刷すると、より一層豪華で統一感のある仕上がりになります。
ただし、台座にデザインを施す場合は、以下の【最重要注意事項】を必ずお守りください。
【最重要注意事項】台座を全面印刷する場合
台座に全面印刷を行う場合、本体を差し込む穴の周囲に、必ず3mm程度の「印刷しない余白」を設けてください。
この余白がないと、本体を抜き差しする際の摩擦で、穴の周りの印刷が剥がれたり、傷が付いたりする大きな原因となります。大切なグッズを長く綺麗に保つために、非常に重要なポイントです。

【OKな例】
上の図のように、差し込み口(黒い四角)の周りには、印刷データ(この場合は赤いカットラインの内側すべて)を配置しないでください。

【NGな例】
差し込み口のギリギリまで色や柄が印刷されている。
上記の手順で台座のカットラインを作成(またはテンプレートからコピー)したら、これまで作成した本体のカットラインの下部に配置し、パスファインダーの「合体」機能で一つのオブジェクトにしてください。
【かんたん解説】白版データの作り方
次に、カラー印刷を鮮やかに次に、あなたのイラストのカラー印刷を鮮やかにするための「白版」データを作成します。これは、アクリルに直接印刷すると色が透けてしまうのを防ぐ、重要な「下地」の役割を果たします。
これからご紹介するのは、驚くほど簡単な方法です。するための白版データを作成します。
イラストを複製し、「白版」レイヤーにペースト

まず、「イラスト」レイヤーに戻り、ロックを解除します。
- 白インクを下地に敷きたいイラスト部分をすべて選択し、コピー(Ctrl+C)します。
- レイヤーパネルで「白版」レイヤーを選択します。(このとき、作業しやすいように「イラスト」レイヤーは非表示にするか、再度ロックしておくと良いでしょう。)
- [編集] > [同じ位置にペースト](Ctrl+F)を実行し、コピーしたイラストを寸分違わぬ位置にペーストします。
ペーストしたイラストを「黒100%」に変換


ここが新しいテクニックのポイントです。複雑な色のイラストも、この手順で一発で真っ黒なシルエットに変換できます。
- ペーストしたイラストがすべて選択されている状態で、メニューバーから [編集] > [カラーを編集] > [カラーバランス調整] を選択します。
- 表示されたウィンドウで、以下のように設定します。
- カラーモード: CMYK
- ブラック(K)のスライダー: 右端の 100% まで動かす
- シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のスライダー: すべて左端の -100% まで動かす
- **「変換」**のチェックボックスにチェックを入れる
- OKをクリックすると、カラフルだったイラストが、綺麗な真っ黒のシルエットに変換されます。
テンプレートの「白版」レイヤーに移動

最後に、この黒いオブジェクトを白版レイヤーに移動させます。
画面上の見た目は黒いままかもしれませんが、データ上は正しく「白版」として設定されました。
たったこれだけで、白版データの完成です!この一手間が、完成したアクスタの発色をプロのクオリティに引き上げてくれます。
【入稿前に絶対確認!】失敗しないための最終チェックリスト
素晴らしいデータが完成しましたね! 最後に、データ不備で悲しい「再入稿」の連絡が来ないように、この魔法のリストで最終確認をしましょう。
レイヤーは正しく分かれていますか?
- オブジェクトは正しいレイヤーに配置されていますか?
→「カットライン」レイヤーにカットライン、「白版」レイヤーに白版データ、「イラスト」レイヤーにイラスト、というように、正しく振り分けられているか最終確認!
カットラインは完璧ですか?
- 「塗り」は「なし」で、「線」だけになっていますか?
- 鋭すぎる角(トゲ)はありませんか?(安全と品質のための重要項目です!)
白版は完璧ですか?
- 白版データの色は、「K100%」になっていますか?
→ これが白インクで印刷するための指示です。画面上は黒くても、この設定がされていれば大丈夫。 - 「線」は「なし」で、「塗り」だけになっていますか?
✅ その他の最終確認
- 全ての文字(テキスト)はアウトライン化しましたか?
→ [書式] > [アウトラインを作成] を忘れずに!これをしないと、意図しないフォントに置き換わり、文字化けする原因No.1です。 - 差し込み口の幅は、テンプレートのものを変更していませんか?
→ 幅を変えてしまうと、台座にはまらなくなってしまいます。
すべてにチェックが入ったら、いよいよ入稿です!
さあ、あなたの「理想」を現実の形にしよう!
お疲れ様でした!ここまで、本当によく頑張りました。 「白版」「カットライン」…最初は呪文のように聞こえた言葉も、今ではもう怖くありませんね。
あなたは、自分の手でプロ品質のデータを作成し、理想のグッズを形にするための、一生モノのスキルを手に入れました。
完璧な設計図(入稿データ)は、もうあなたの手の中にあります。 残るは、それに命を吹き込み、世界に一つだけの宝物として現実世界に召喚するだけです。
私たちにお任せいただければ、あなたが作った大切なデータを、最高の品質で、一つひとつ丁寧に形にすることをお約束します。
準備ができたら、下のボタンから次のステップへお進みください。 あなたの素晴らしい作品が、最高のアクリルスタンドとして完成する日を、私たちも心から楽しみにしています!

