「PCの画面で見た、この絶妙な色がそのままグッズになるだろうか?」 「黒いTシャツに、この淡いイラストを綺麗に印刷できる?」
デザインにこだわればこだわるほど、「色の再現性」に関する不安は大きくなるものです。
この記事は、そんなプロフェッショナルや、品質に妥協したくないお客様に向けて、オリジナルグッズ製作における最も専門的で、最も重要な「データ作成」と「色」の知識を、余すところなく解説する完全ガイドです。
このページをブックマークしていただければ、あなたはもう入稿データで迷うことはありません。そして、私たちグッズメイドが、いかにお客様のイメージを忠実に再現することに情熱を注いでいるか、ご理解いただけるはずです。
仕上がりの9割を決める、データ作成の「5大原則」
最高の仕上がりは、優れたデザインと、それを支える「正しいデータ」から生まれます。以下の5つの原則は、私たちが日々、何百ものデータを確認する中で、最も重要だと感じている項目です。
1. カラーモードは、なぜ「CMYK」でなければならないのか?
PCモニターは、赤(R)・緑(G)・青(B)の光を混ぜて色を作ります(加法混色)。色を混ぜるほど白く明るくなるため、非常に鮮やかな色を表現できます。一方、印刷は、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・黒(K)のインクを紙や素材に乗せて色を作ります(減法混色)。原理が全く違うため、RGBで作られた鮮やかな蛍光色やビビッドな青色は、CMYKでは物理的に再現できず、必ずくすんだ色に変換されてしまいます。最初からCMYKでデザインを始めることが、イメージとの乖離をなくす第一歩です。

2. 解像度「350dpi」は、なぜそんなに必要なのか?
解像度とは、画像のきめ細かさのことです。Web用の画像(72dpi)は、1インチ四方に72個のドットしかありません。一方、印刷に必要な350dpiは、同じ面積に350個ものドットが密集しています。72dpiのデータを無理やり引き伸ばして印刷すると、ドットの一つひとつが大きく粗くなり、ぼやけた眠たい印象のデザインになってしまいます。

3. なぜ「アウトライン化」しないと事故が起きるのか?
「アウトライン化」とは、文字情報を「図形」に変換し、フォントがインストールされていないPCでも同じ見た目を保証する、印刷業界の必須ルールです。これを怠ると、意図しないゴシック体や明朝体に置き換わり、ブランドイメージを損なうデザインが、そのまま製品になってしまう大事故に繋がります。

4. プロの仕事は「塗り足し」で決まる
商品を断裁する際、コンマ数ミリのズレは必ず発生します。塗り足し(仕上がりサイズより3mm外側までデザインを広げること)は、そのズレによって商品のフチに白い線が入ってしまうのを防ぐための、「保険」であり「プロの気配り」です。

5. 「画像埋め込み」は、なぜ必要か?
Illustratorで画像を「リンク」配置するのは、料理でいう「仮置き」の状態です。そのファイルだけを入稿するのは、食材が置かれていないキッチンで「料理を作れ」と言っているのと同じです。「埋め込み」は、全ての食材(画像データ)をファイルというキッチンに完全に持ち込む作業であり、これを行なって初めて、私たちは調理(印刷)を始めることができます。

【最重要】色の再現性を操る「白版」の知識
透明なアクリルや、色のついた素材への印刷品質は、この「白版(しろはん)」を理解しているかどうかで決まります。
1. 白版とは「白いインクの下地」のこと
黒い画用紙に、そのまま黄色い絵の具を塗っても、下の黒色が透けてしまい、鮮やかな黄色にはなりませんよね。一度、白い絵の具で下塗りをして、真っ白なキャンバスを作ってから黄色を塗ることで、初めてイメージ通りの色が表現できます。
オリジナルグッズの印刷における「白版(白引き)」とは、まさにこの「白い絵の具での下塗り」と同じ、最も重要な役割を担っています。
印刷で使われるインクは、絵の具と同じで完全に不透明ではなく、わずかに下の色が透ける性質を持っています。そのため、透明なアクリルや、黒・ネイビーといった色の濃いTシャツなどの上に直接フルカラー印刷をすると、インクが素材の色に負けてしまい、全体的に暗く、くすんだ印象の仕上がりになってしまいます。
この現象を防ぐため、私たちはまずデザインデータの下に、土台となる「白インク」の層を一層印刷します。この土台があることで、その上に乗るフルカラーのインクは下の素材の色の影響を受けず、PCモニターで見ていたイメージに近い、鮮やかでクッキリとした発色が可能になるのです。
特に、キャラクターの肌の色や、企業のロゴに含まれる白色などを正確に表現したい場合には、この白版が不可欠となります 。
2. 白版「あり/なし」の仕上がり比較

白版あり
インクが沈まず、デザイン本来の色が鮮やかに表現されます。キャラクターの肌の色や、ロゴの白色をクッキリと表現したい場合に必須です。(推奨)

白版なし
下地のアクリルの黒が透けて、全体的に暗く、ステンドグラスのような独特の風合いになります。デザインの意図として、あえてこの効果を狙う場合もあります。
3. データ作成時の注意点
基本的には弊社にて白版データを作成しますが、お客様側で作成される場合は、デザインレイヤーとは別に「白版」といった名前のレイヤーを作成し、白インクを乗せたい部分をK100%のオブジェクトでご指定ください。
プロでも難しい、「淡い色(パステルカラー)」の再現について

1. なぜ、濃色生地へのパステルカラー印刷は難しいのか?
これは、インクの「透過性」と下地の「影響力」の問題です。たとえ強力な白版を下地に敷いても、その上に乗るパステルカラーのインク層は非常に薄いため、下地の白や、さらにその下の濃色生地の色の影響を100%遮断することができません。黒いTシャツの上に、ベビーピンクのインクを乗せると、下の黒がわずかに影響し、モニターで見ていたよりも少しだけ彩度が落ちた(くすんだ)ピンクに見えることがあります。
2. 私たちができること、そしてお客様へのお願い
私たちは、この影響を最小限に抑えるため、インクの濃度や印刷設定を細かく調整します。しかし、物理的な限界が存在することも事実です。 もし、コーポレートカラーやキャラクターの肌の色など、1%の色の違いも許容できない、極めて厳密な色再現をご希望の場合は、必ず「実物サンプルでの色校正(有料)」をご利用ください。量産前に実際の仕上がりをその目でご確認いただくことが、最高のグッズ作りへの最も確実な道です。
この記事を読んでも解決しない、専門的なご質問やご相談も大歓迎です。 お客様のデザインを最高の形で実現するため、私たちの知識と経験をぜひご活用ください。